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が、ともかく、追う。
人影が再び路地に入った。
見失ってはいけない。
先野はその狭い路地に入った。ビルとビルの間の、薄暗い通路のような路地だった。
が、突然、視界が真っ暗になった。
いくら明るい場所から暗い場所へと入ったからといって、ここまで暗くなるか?
そう思ったとき、足元の感覚がないことに気づく。
なにが起こったのかわからなかった。体を打ちつける感覚と鋭い痛みに先野は顔をしかめる。足、頭、腰と、あちこちが痛んで、どうやら高いところから落ちたことがわかった。真っ暗な周囲のなかにあって、見上げる視界に明るさのある円い形。
マンホールに落ちてしまったのだとわかった。
だがなぜ蓋が開いていた──?
理由はわからないが、そんなことより、とにかくここから出なければ……。
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