5. 妄想と現実と

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 蒼宮麗亜がデートから帰ってきたのは、翌朝十時ごろだった。  昨夜のデート中は邪魔をしないでという要望で中断していたボディガードが再開されたのは、電話をもらって三条がタワーマンションに駆けつけた昼過ぎからだった。 「ご苦労さま。また今日から頼んだわよ」  と、先野が負傷したことを知らない麗亜は何食わぬ顔で挨拶を返してきた。  そして、マンションに入ってからなんの動きもないまま、時間がすぎていく。 (今日はもう外出せずに、このまま夜になってしまうかな……)  駐車場の軽自動車のシートに収まって、そんなことをつらつらと思っていると、麗亜から電話が入った。 「買い物に行きます」  マンションの玄関から、ベージュのコートの襟をたてた麗亜が現れた。
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