5. 妄想と現実と

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 そして、先野の怪我──。走り去る人影を追いかけてマンホールに落ちるなんて昭和のマンガみたいな展開がそうそう起こるだろうか。偶然にしては出来過ぎていると思うのは考えすぎ?  そこにはなにかしらの作為があるような気がするのだった。  でも、その正体がはっきりしない。  ストーカーなら、もっと実体を持った存在として近づくのが多い。自分の存在や気持ち、思いの強さをわかってほしくて強烈にアピールする。ここまで姿を見せずにいるなんて、まるで──。  三条は浮かんできた考えに苦笑する。  まるで、身辺調査をする探偵ではないか──。  しかし、そう考えると、ストンと腑に落ちてしまう。  誰かが探偵を雇って麗亜を調べている……。むろん理由はわからない。  だがもしそうだとすると厄介だ。
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