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ふいに機械を操作する男の手が止まった。熟考するように、なんの意味があるかわからぬ幾何学模様を表示する画面を見つめる。
そのタイミングで、三条は声をかけた。
「あの……なにをされてるんですか?」
男は飛び上がった。
「★#§∧&Å∞∬@!」
言語化できない叫び声をあげ、腰を抜かして這いながら逃げようとする。まるで鬼か悪魔にでも遭遇したかのような、大げさな狼狽ぶりだった。
「あ、待ってください」
可哀想なほどあわてまくる男が気の毒で、三条はなんだか悪いことをしているような気分である。しかし、しっかり事情を聞くために、立ち上がろうとしてひっくり返る男に追いついた。
「これ、忘れてますよ」
置き去りにされた機械を携えて言うと、
「わー、ゴメンナサイゴメンナサイ!」
男は地面に頭をつけるのだった。
機械の表示画面には、どの国の言葉なのか、見たこともない文字が並んでいた。
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