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古びた5階建てのマンションの4階、403号室。「伊藤」という小さな表札がかけられていた。
大きな窓のリビングルームは、テーブルとテレビ、パソコンデスクが隅にあるだけで、他に調度品はない。モデルルームのような生活感のなさ。
「まぁ、そこへどうぞ」
男は先にテーブルについた。
三条はその向かいのイスにすわる。警戒心が顔に出ないように気を引き締めた。
──なにが目的なのか、よくわからない。
──ほいほいとついてきてよかったのだろうか。
そんなことを今さら思ってしまう。
「さきほど見てしまったことについては、どうか口外しないでほしいんです」
そう言って、男は1万円札の数枚、テーブルに置いた。
ますます怪しい。
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