7. ストーカーは現れず

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  ☆  カレは、突然去っていった。  理由はわからない。ある日、連絡がつかなくなり、それっきりだった。  わたしのなにが気に入らなかったのだろう?  思い返すが、心当たりがない。  あるいは、カレの都合なのかもしれない。なんだか変わった感じの男性(ひと)だったから(食事のとき、おかわり自由のパンを20個も食べたり、デザートのライチを皮ごと丸呑みしたり)。  わたしとの付き合いは、ほんの気まぐれだったのかもしれない。  よくあることだった。金持ちは、普通の感覚の人じゃないし(ヘッドフォンでなにを聴いているのかと携帯プレーヤーを聴かせてもらったらお経だったりした)、あれこれ考えても詮無い。  幸い、ストーカーの気配もなくなったし、新しい男をつかまえなきゃ──。  蒼宮麗亜は前を向く。次の恋を探して、次の金づるを探して。 【カネの成る木を持つ女】(了)
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