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気が遠くなるほど待っていたけれど自分からは連絡しないと誓っていたと慎重な男は言って私の美しさを丁寧に褒めたあと私の頬に短く口づけをした。私はそれに素直に応えることが出来てそれが嬉しくてたまらないことをその場で飛び上がって慎重な男の腰に私の両脚を巻き付けることで表現したら慎重な男は数年ぶりに笑ったみたいな感じに不自然な声を出して咳き込んだあと私の唇に口づけをしたけど少し血の味がして私は興奮を覚えながらそれを少し抑えて心配な表情をしてみせた。慎重な男はすぐに気付いて喉がちょっと痛むだけで年齢の所為だと言ったあと、君の歯に舌の端っこを引っかけたかも知れないが何れにしても気にするなと今度は上手に笑ってみせてから私を腰から降ろしてから穏やかに謝った。いくらか舞い上がっていた私はその謝罪の訳を聞きそびれていた。
慎重な男が割とあっさり死んでしまったときに私の偽物の瞳が一緒に埋葬されて慎重な男の秘書も私もそのことについて触れようとしなかったがどう考えても沈黙以外の選択肢は無かった。そのときのことを思い出しても私は取り乱すことはしないし、慎重な男の秘書はさらに年齢を重ねて今は私の秘書になっているが私の偽物の瞳は地中の棺の中の慎重な男の傍らで共に朽ちてゆくのだろう。クレジットはすべて私のものに変更していていつの間にか大抵のものは何でもすぐさま買ってしまえるようになったが慎重な男の痕跡がどこにも無いことがほんの少しだけ胸の奥をくすぐって可笑しいと私の秘書に打ち明けたときに物凄く久しぶりに身体の芯から欲情した私はなんて悲惨なのだろうと思って何もしていないのに濡れているのが分かって私は私の秘書と長い時間をかけて深く深く私の秘書の匂いや形以外何も考えられなくなるぐらい深く繋がり合った。
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