ヒトインフルエンザ

　ドラマの途中でテレビが切り替わり、ニュース速報が流れた。

『ニュース速報です。先日確認された強感染型インフルエンザにより死者が多数出ており、政府より緊急事態宣言が発令されました。
　感染力が非常に高く、空気感染や接触感染などにより広がりを見せています。四十度を超える発熱と鼻からの出血が特徴で、症例では数日で死に至っています。外出を控えるようご注意下さい。
　それでは、政府からの発表の様子をご覧下さい――』

　映像が切り替わる瞬間、報道していたアナウンサーの鼻から血が流れた。

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　最初に感染者が出たのは静岡のある村であった。高熱からの突然死。

　当時新型インフルエンザと診断されたその患者は、隔離され治療を続けていたが数日で死亡した。その検体が検査機関に送られ、突然変異型のインフルエンザと断定。異常に感染力が強く、症状も非常に重いものになると想定がされた。

　これまでのインフルエンザに使用していた特効薬では効果が見られず、ワクチンも効かない。医療機関でも全く成す術がなかった。

　人間に猛威を振るうこのインフルエンザは――『ヒトインフルエンザ』と名付けられた。