ヒトインフルエンザ

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 最初の患者を診察した医者と看護師は既に感染しており、数日後には死亡した。  そこから静岡県内で爆発的に感染が広がり、緊急事態宣言が出される事態に至ったのだ。  政府は全国的な感染を防ぐため、県境に壁の建設を急がせた。  内密に且つ即座に行われたその工事で県一つ丸々隔離することに成功。人々が気付くも時既に遅し、そこから逃げ出す事は不可能な状況であった。  多くが壁に押し寄せたが意味を成さない。そこでは、設置された巨大なスクリーンから防護服とガスマスクを付けた首相からのメッセージが流されるだけであった。 『県民の皆さん、落ち着いて行動して下さい。日本を守るために必要な措置として壁を築かせて頂きました。国家の安全のためご理解を頂きたいと思います。なお食料などは……』  繰り返し流される映像に罵声を浴びせる人達。  見捨てられたと泣き叫び発狂する人達。  壁の中は混乱に陥った。 「宇辺総理、これで一安心ですな」 「ああ、だが油断は禁物だ。既に感染者が県内から出ている可能性は否定出来ない。感染者が見つかり次第一帯を封鎖するように指示は出してある。反発する者達には武力で制圧する許可も出した」  防護服、ガスマスクのまま会議を行う政治家達。 「総理、米国のポーカー大統領と電話が繋がりました」 「直ぐ行く。日本の地位の為にも何としてでも抑え込むぞ。犠牲は厭わない」
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