ヒトインフルエンザ

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―――― 『日本国民の皆さん。このような事態となってしまい本当に申し訳ありません。私は最後まで皆さんと一緒にこの日本に留まります。  私はこの日本が大好きでした。優しい心を持ち、他人の事を想える日本人が大好きでした。  私はこの日本に生まれ、この土地で育ち、皆さんと共に過ごせた八十三年間に後悔はありません。  無理を承知で言います。最期はみんなで笑いましょう。笑顔で最期の瞬間を迎えましょう。これが私から皆さんへの……』  その瞬間――日本全土へアメリカから放たれたミサイルや戦闘機、空母からの砲撃が雨のように降り注いだ。次々に爆炎で埋め尽くされていく。逃げる場所など無い程に。  そして……全てが焼き払われ日本国民は全滅。日本は荒野が広がる只の無人島と化した。 「ミッションコンプリート。帰還します」  日本上空を旋回していた戦闘機は空母へ戻っていった。 ――数週間後のニューヨーク  世界を震撼させたニュースも、時間の経過と共に段々と話題に出なくなってきていた。  今の所日本以外での感染者は確認されておらず、終息したとの安堵もあるのかも知れない。  そんな中、とあるカフェでは若者二人が日本について語り合っていた。  「俺、日本に友達が居たんだ。そいつが死んだなんてまだ実感が持てないよ」  男はそう言い窓から空を見上げた。 「そっか……それは気の毒だったな。でも俺、お前には悪りぃけど日本だけで感染が止まって良かったと思ってる。やりたいことは沢山あるしまだ死にたくねーよ。だけど……本当に終息したんだよな?」 「バカな事言うな。もし終息してないならアイツが報われないだろ。それに………………ん?」  男が窓の外に向けていた視線を戻すと、目の前に座る男の鼻から血が流れていた。 完
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