未確認恋愛感情URF

1/17
27人が本棚に入れています
本棚に追加
/17ページ

未確認恋愛感情URF

 佐伯美代子は陸上部である。  高い位置で結んだ長いツインテールを揺らし、ぴょんぴょんとハードルを飛び越える姿から「うさぎ美代子」、略して「うさ子」と呼ばれている。  うさ子は高校一年生の中では背が高い方で、跳ねるツインテールの頭は視界に入りやすかった。 「昨日のブイナナみた? 超格好良かったよねー。……そうそう、あの時の孝史がさー」  何気ない瞬間にも視界に入るもんだから、自然と友人との会話も聞こえてくる。うさ子はアイドルグループブイナナのリーダー孝史のファンで、ブイナナが出ているテレビは全てチェックしているらしい。 「まじで? 行く行くっ! 孝史が美味いって言ってた店でしょ? 一度あの店のパンケーキ食べてみたかったんだよねー。クリームたっぷりにフルーツが乗ってる奴。想像しただけでよだれが垂れるわ……あはは。ケーキは別腹だって」  昼休み。教室では仲のいいグループが集まってそれぞれに昼飯を囲んでいる。俺は親友の正浩と二人、購買のパンを頬張っていた。 「向こうの孝史は随分と洒落てるな、隆史。パンケーキだとよ」  正浩はニヤニヤ笑いを噛み殺しながら、俺の顔を覗き込んできた。 「うるせぇ。一緒にすんなよ」 「俺たちも行ってみるか?」 「馬ぁ鹿。男二人で行くような店じゃないだろ」  俺は軽いノリの正浩を半眼で睨みつけつつ、コーヒー牛乳のストローをくわえた。  俺の名前は間宮隆史(まみやたかし)。ブイナナの山宮孝史(やまみやたかし)と一音違いの高校一年生。当たり前だがブイナナとは何の関係もない。 「孝史って人類の宝だよね。あの格好良さは宝だよ、国宝だよ」 「国宝だってよ、隆史」 「だから、一緒にすんなって」  別に盗み聞きをしている訳じゃない。うさ子の声が大きいから自然と耳に入ってくるだけだ。少しハスキーな声。だから余計に目立つ。
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!