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花の栄田に着いてからは、
四十七匹は名を変えて茂みに潜伏し、
討ち入りの機会を待った。
かくして十二月十四日の夜。
四十七匹は獣らしく足音も立てず、
眼を光らせながら虎邸に向かう。
先頭の呉里助は、
ふと見上げると満天の星空が浮かんでいた。
呉里助はあまり信仰心は厚く無い方だが、
この時ばかりは、
虎を討ち果たして主君の無念を晴らす事を祈った。
虎の家臣も、
元阿弗利加藩獣討ち入りも忘れ掛けた為、
虎邸の正門には夜行性の門番も篝火も無かった。
「各々方(おのおのがた)
今こそ若殿の無念を晴らす時にござるウホ!」
呉里助のゴリラらしい、
陣太鼓さながらのドラミングと共に、
元藩士達は壁に爪を突き立て、
一斉に登って襲い掛かる。
力自慢の牛男田又之丞と、
寺犀吉右衛門は正門を突破し、
堂々と大猿親子は侵入する。
狙う獲物はにっくき虎上野介、
今こそ忠義の狩りが始まるのだ。
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