第三幕 虎邸討ち入り

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花の栄田に着いてからは、 四十七匹は名を変えて茂みに潜伏し、 討ち入りの機会を待った。 かくして十二月十四日の夜。 四十七匹は獣らしく足音も立てず、 眼を光らせながら虎邸に向かう。 先頭の呉里助は、 ふと見上げると満天の星空が浮かんでいた。 呉里助はあまり信仰心は厚く無い方だが、 この時ばかりは、 虎を討ち果たして主君の無念を晴らす事を祈った。 虎の家臣も、 元阿弗利加藩獣討ち入りも忘れ掛けた為、 虎邸の正門には夜行性の門番も篝火も無かった。 「各々方(おのおのがた) 今こそ若殿の無念を晴らす時にござるウホ!」 呉里助のゴリラらしい、 陣太鼓さながらのドラミングと共に、 元藩士達は壁に爪を突き立て、 一斉に登って襲い掛かる。 力自慢の牛男田又之丞(ウシオダ・マタノジョウ)と、 寺犀吉右衛門(テラサイ・キチエモン)は正門を突破し、 堂々と大猿親子は侵入する。 狙う獲物はにっくき虎上野介、 今こそ忠義の狩りが始まるのだ。
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