第一幕 辰之廊下

3/5
前へ
/20ページ
次へ
しかし一見親切に見える虎上野介(トラ・コウズケノスケ)は、 安吾雷音立守(アンゴ・ライオンノタテガミ)に対し、 激しい敵愾心を燃やしていた。 「阿弗利加藩などと言う辺境の外様大名め。 いかに武芸に優れるからとて、 亜細亜藩で譜代大名である儂を差し置いて、 百獣の王と名乗りおってトラに。 若い頃なら立ち会い出来るものの、 この老齢では難しいトラ。 故に老齢故の強みたる老獪さにて、 上様の前で恥をかかせてやろうトラ」 「虎殿、今何か申されましたアンゴ?」 「いやいや、何でもござらぬトラ。 それと安吾殿。 上様には逆鱗と言う逆さの鱗が首に生えていて、 そこに触れると大層喜ばれるトラ」 「そうなのか! じゃあ頑張って触るアンゴ!」 安吾雷音立守は虎上野介に、 騙されているとは一切気付かず、 共に将軍が待つ大広間へと足を運んだ。 「上様のおな~り~」 狸の腹太鼓と共に、 登竜将軍の爪吉は、 小姓を連れて尊大に現れた。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加