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しかし一見親切に見える虎上野介は、
安吾雷音立守に対し、
激しい敵愾心を燃やしていた。
「阿弗利加藩などと言う辺境の外様大名め。
いかに武芸に優れるからとて、
亜細亜藩で譜代大名である儂を差し置いて、
百獣の王と名乗りおってトラに。
若い頃なら立ち会い出来るものの、
この老齢では難しいトラ。
故に老齢故の強みたる老獪さにて、
上様の前で恥をかかせてやろうトラ」
「虎殿、今何か申されましたアンゴ?」
「いやいや、何でもござらぬトラ。
それと安吾殿。
上様には逆鱗と言う逆さの鱗が首に生えていて、
そこに触れると大層喜ばれるトラ」
「そうなのか!
じゃあ頑張って触るアンゴ!」
安吾雷音立守は虎上野介に、
騙されているとは一切気付かず、
共に将軍が待つ大広間へと足を運んだ。
「上様のおな~り~」
狸の腹太鼓と共に、
登竜将軍の爪吉は、
小姓を連れて尊大に現れた。
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