第二幕 阿弗利加藩お取り潰し

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一方そんな栄田とは打って変わり、 阿弗利加藩では平穏な日々が続いていた。 「そろそろ若殿が、 帰って来られる頃にござるウホな」 「父上!まことに楽しみにござりますウホ!」 密林村の大きな武家屋敷にて、 バナナを喰らうゴリラ獣人の親子は、 阿弗利加藩家老の大猿呉里助(オオサル・ゴリノスケ)と、 その嫡子の大猿力瘤(オオサル・チカラコブ)である。 本来、武獣(ブシシ)には肉食獣人しかなれず、 力で無理矢理ねじ伏せられる象田氏を除けば、 草食獣人は基本的に農民である。 鬣も生え揃わぬ幼獣時に、 安吾雷音立守は藩主となった。 当時飢饉に喘ぐ密林村を救った、 銀背中(シルバーバック)が立派な地主として、 手腕を振るっていた呉里助を、 家臣として召し抱えたのだ。 「わしがかように帯刀し、 (かみしも)に袖を通せるのも、 全て若殿のお蔭にござるウホ。 他の草食獣人達も召し抱えられたウホ」 「でも家老にまで上り詰め、 広大な阿弗利加藩を纏め上げたのも、 他の草食獣人達も召し抱えられたのも、 父上の努力によるものでござりますウホ。 私も父上の様に若殿に支えとうござるウホ」 「はっはっは!親子二代に渡って、 名君に忠義を尽くす喜び、 我ら侍となりてまことに良かったでござるウホ」 上機嫌で談笑する大猿親子、 しかしそこに安吾と共に栄田に行っていた、 堀部鷹庸(ホリベ・タカツネ)が、 文字通り飛んで来たではないか! 「御家老!一大事にござるタカ!」
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