映画館

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「お客さん!!」 急に後ろから声をかけられた。 最初は俺じゃないと思ったが、すぐに俺以外に人がいないのに気づく。 「はい…?」 「すみません、これお客さんのものですよね?」 そういった店員が持っていたのは、俺のスマホだった。 「ああっ、すいません、ありがとうございます」 「いえいえ」 「でも、何で俺だって分かったんですか?」 「だってお客さん有名人ですから」 有名人?なんの話だ? 俺はただのサラリーマンだぞ? 「あ、すいません。 何の事かわかりませんよね。 お客さん毎週来てるので、お客さんの顔を知らない従業員はいないんですよ?」 そんなに有名なのか… 「それにまあまあなイケメンですし」 「イケメンな貴方に言われても説得力が欠けますね」 「あははっ、面白いですね。 そうだ!これを期に、僕と友達になってくれませんか?」 「まあ、良いですけど…」 積極的な人だな。 でも、嫌いではない。 「あ、ありがとうございます!!」 そんなに嬉しいのか…何かしっぽと犬耳が見えそう。 「俺は日下部深夜です」 「敬語じゃなくて良いですよ。 僕は平川智和です」 「だったらお前も敬語使うな」 「ええっ、嫌ですよー。 日下部さん僕より年上じゃないですか。 そこは諦めてください」 「なんだよそれ。 お前、面白いな」 「それは誉められてるんですか? 後、僕は智和っていう名前があります!」 「あー、わりぃ。 で、智和?仕事はどうした?」 「…ああっ」 バカなのか?こいつは。 「では、また今度」 「ああ。頑張ってこい」 「はいっ!! あの、僕の仕事終わったらお茶でも飲みに行きませんか? あと三時間で終わるんで」 「良いぞ。 じゃあ映画見終わったら入り口で待っておく」 「やったぁ!」 そんなに喜ぶことか? 走り去る智和の後ろ姿にまた耳としっぽが見えた気がした。
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