第一話 カイユ村の少年

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「お、お頭!」 「お前ら偉くなったもんだな?目撃者を勝手に逃がそうとするなんざ。」 お頭と呼ばれた男は赤い髪に赤い髭、浅黒い肌に熱い胸板を持つ体格の良い男だった。ファルを一瞥すると腰に下げた剣を抜き、突きつけた。 「お頭、そいつはまだ子供で...!」 「見逃してやりましょうよ!」 「うるせえな。黙ってろ。」 低いがよく通る声で、男は部下を黙らせた。鋭い視線がファルを射抜いた。 「目撃者は生かしておかない。それがラ・ゲルダのルールだ。」 首筋に剣を突き付けられ、ファルは息をのんだ。剣も恐ろしいが、男はもっと恐ろしかった。威圧感のある眼差しと、鍛え抜かれたであろう肉体。それらが絶対に逃がさないと訴えていた。ファルを捕まえた男たちとは、違う。 「どうする、小僧?」 これまでだと思った。今まで力の強いものに逆らって勝った試しはない。ジーナにはいつも負けてばかりだった。思い出したのはティアのことだ。 待ってるね...。 記憶の中で、金髪の少女が笑った...。 「...死にたくない。」 「聞こえねえな。」 「死にたくない!!」 会いに行くと約束した。だから、まだ、死ねない...! 男がふと笑った。今までの威圧感がうそのように消え、男は剣をのけた。 「お頭!」 「行くぞ、お前ら。」 「どうするんですか、こいつ...?」 お頭は笑って答えた。 「目撃者は生かしておかない。それがラ・ゲルダのルールだ。」 「でも、こいつ生きてますぜ?」 「仲間なら、何を見ても問題ないだろ?」 こうしてファルはラ・ゲルダ盗賊団の一員となった。
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