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「お、お頭!」
「お前ら偉くなったもんだな?目撃者を勝手に逃がそうとするなんざ。」
お頭と呼ばれた男は赤い髪に赤い髭、浅黒い肌に熱い胸板を持つ体格の良い男だった。ファルを一瞥すると腰に下げた剣を抜き、突きつけた。
「お頭、そいつはまだ子供で...!」
「見逃してやりましょうよ!」
「うるせえな。黙ってろ。」
低いがよく通る声で、男は部下を黙らせた。鋭い視線がファルを射抜いた。
「目撃者は生かしておかない。それがラ・ゲルダのルールだ。」
首筋に剣を突き付けられ、ファルは息をのんだ。剣も恐ろしいが、男はもっと恐ろしかった。威圧感のある眼差しと、鍛え抜かれたであろう肉体。それらが絶対に逃がさないと訴えていた。ファルを捕まえた男たちとは、違う。
「どうする、小僧?」
これまでだと思った。今まで力の強いものに逆らって勝った試しはない。ジーナにはいつも負けてばかりだった。思い出したのはティアのことだ。
待ってるね...。
記憶の中で、金髪の少女が笑った...。
「...死にたくない。」
「聞こえねえな。」
「死にたくない!!」
会いに行くと約束した。だから、まだ、死ねない...!
男がふと笑った。今までの威圧感がうそのように消え、男は剣をのけた。
「お頭!」
「行くぞ、お前ら。」
「どうするんですか、こいつ...?」
お頭は笑って答えた。
「目撃者は生かしておかない。それがラ・ゲルダのルールだ。」
「でも、こいつ生きてますぜ?」
「仲間なら、何を見ても問題ないだろ?」
こうしてファルはラ・ゲルダ盗賊団の一員となった。
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