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ファルの家は6人家族だ。祖父と祖母、父と母、兄とそして自分。兄は勉強熱心で農作業にも精を出し、人としても一目置かれていた。弟のファルから見ても立派な人物で、家を継ぐのは間違いなく兄だ。昔から何かと比べられることが多かった。兄のようにとまでは言わないが、もう少ししっかりしていれば...。そんな言葉を生まれてからずっと言われてきた。
カイユ村を含む広範囲を襲う飢饉は悲惨なものだった。夏の日照りが強く水不足で苗が育たなかった。冬の訪れが早く収穫期が短かった。備蓄はすぐに底をついた。
農村は人が多い。種まきや収穫にはどうしても人手が必要だからだ。人手を維持するためには多くの食料を必要とする。飢饉が訪れたとき真っ先に行われるのは口減らしだ。
こうなったとき、ある程度の予測はついていた。この家に絶対に必要なのは兄で、自分はおまけだ。一番最初に減らされるのは自分だと...。
ファルはわずかなお金と引き換えに人買いに売られた。
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