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たくさんの子供たちがいた。女の子が7割、男の子が3割くらいだろうか。みな家族に売られた子供たちばかりだ。
人買いに買われたファルは馬車に載せられた。馬車といっても屋根の無い荷車のようなものだ。それに子供たちがすし詰め状態で乗せられている。以外にも逃げ出そうとする者は少なかった。ここにいるものはほとんどが飢饉のため自分の家族に売られたのだ。自分の境遇をまだ受け入れきれず、放心状態にあるのだろう。
その中で、ファルはどこか冷めていた。カイユ村が自分の居場所であると、もともと感じていなかったからかもしれない。両親は自分を厄介者だと思っていたし、後継ぎには兄がいる。ジーナのように自分をいじめるものもいた。あの村で自分を受け入れてくれたのはティアだけだった。
そうだ。ティアはどこにいるんだろう?
数日の間、馬車は大きな街道を進んでいた。カイユ村はアーセンディオン国の南東の端にあるが、馬車は西に向かっていた。日が暮れると馬車は街道の端に寄って止まった。子供たちのすすり泣く声がしたが、夜が深くなるにつれて声も聞こえなくなっていった。
ファルの目は冴えていて、眠れそうになかった。今夜は半月で、薄暗いが真っ暗で何も見えないほどではない。初めのころは見張りもいたが今はもう逃げ出そうとする者はおらず、みな寝静まっていた。辺りは静寂に包まれていた。
今なら抜け出せるのではないか?
何も見えないほどではないがちょうど良い暗闇。見張りも誰も眠っている。
カイユ村にいるときは誰かに逆らうことなど考えたことはなかった。両親への罪悪感があった。優秀な兄への対抗心から、良い子でいたいという思いがあった。
『...会いに行く。』
『...ありがとう、ファル。待ってるね。』
その言葉がファルの背中を押した。大人にはなっていないけど、会いにいくと約束した。このままでは一生会えなくなるかもしれない。ここから抜け出して、ディオンを目指す。
ティアに会いに行く。
そっと馬車を抜け出した。その時。
街道を逸れた茂みから音がした。
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