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そうして程なく、背後でパタンと扉が閉じられる音に気付くと、
ほぼ同時に、背後からギュッと抱きしめられた。
そして、ハッと小さく息を飲んだ私の耳元で、
「ナッちゃん、機嫌直った?」
やや拗ねた声に囁かれる。
「ごめん。なんか、ちょっとだけイタズラしたくなっちゃって……」
すると、にわかに押し黙った彼がそっと私から離れると、
今、整えたばかりのタオルケットを広げ、
それを羽織るようにして枕元に胡坐をかく。
「ナッちゃん、来て」
片腕を広げ、少しムッとした彼に誘われる。
私は、その誘いのままに、素直に腕の中へ入っていった。
「ナッちゃん、やっぱり怒ってた?」
包み込むように私を抱きかかえた彼に、細く尋ねられる。
「怒ったっていうか……。
昨夜ね、冠くんのスーツに美佳さんの香水の香りが残ってて。
そしたら私、なんか色々思い出しちゃって。
ちょっと落ち着かないっていうか、ムカついたっていうか……」
そして、「だって……」と言葉を切る。
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