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「もし私が、仮に仕事でも友之と一緒にいたら、どう?」
やだっ!
即座に答えが返ってくると共に、キュッと強く抱きしめられる。
その、素直な反応が嬉しかった。
しかし同時に、自分の大人げなさも恥ずかしくなる。だから、
「冠くん、ごめんね」
謝ると、再度キュッと抱きしめられてピッタリと頬を寄せられた。
「僕も、まさか美佳さんの店に行くとは思ってなかったから、
正直、すごくパニックになりました。
でも、お店にいる間は、彼女に個人的な情報を聞かさないように
っていうことだけに必死で、本当に他は何も憶えてなくて……」
ピタリとくっ付いた私たちの間に、小さな沈黙が割り入ってくる。
そして、
「ねぇ、冠くん」
私は、私の心に落ちた黒い影のわだかまりを解くように
脇に立てられた彼の膝に、そっと手を滑らせた。
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