episode216 In Bondage

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episode216 In Bondage

「ねえ、聞いてるの?」 しとしとと窓を打つ雨音が 今日に限って腹立たしいほど騒々しい。 「あの分からず屋を止められるのはあんただけだって言ってるの!」 いいや 騒音の原因はこの金切声だ。 馬鹿みたいに仕立てのいいマタニティーを着て 突然僕の隠れ家に乗り込んできたと思ったら 「やめなさいよ、ブランデーなんて似合いもしない」 「放っておいて。気分なんだ」 さっきから息継ぎもせずがなり立ててる。 「そもそも誰のせいですか」 「なんですって?」 自分の顔ほどあるブランデーグラスを ゆっくりと回しながら 「あの人が分からず屋ならあなたは浅はかですよ――お姉様」 僕は足をテーブルに投げ出して 溜息と一緒にソファーに沈んだ。
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