だしの香りは思い出の香り

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食事が進む中、菱川と悠太が卵焼きに手をつける。 「あっ」 そう言って悠太は固まってしまった。 「お、卵焼き甘くないんだね。だしがきいてる感じだね、ご飯に合うね」 リズムよく菱川はそう言うとどんどんご飯を食べていく。 「大祐はほんと気持ちいいぐらいの食べっぷりだな」 「そうでしょ、そうでしょ」 「いや、別にそんな褒めたつもりでもないけどな」 とにかく楽しそうな菱川の様子に遊佐は苦笑いしつつも楽しそうだった。 「あれ?悠ちゃん。どうかした?」 卵焼きを一口食べた途端に動きが止まってしまっている悠太に気づいた菱川が顔を覗き込む。 「ん?悠太、何か変な味だったか?」 「ううん」 心配そうに遊佐がそう言うが、悠太は首を振った。 「だしをきかせた卵焼きはそんなに作らないから、ちょっと不安だったんだけど・・・・・・気になったことは教えてもらえると・・・・・・悠太?」 「え?え?悠ちゃん?」 悠太の両側で二人は慌て出す。 なぜなら悠太が涙を流していたからだ。 「お、俺なんかした?ごめん」 「ごめん、そんなまずい出来だとは思わなかった」 二人がそれぞれ悠太に謝っていると 「ううん、違う、違うねん」 今度は悠太が慌てて涙を拭うと二人を順番に見て、話し始める。
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