だしの香りは思い出の香り

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「いやぁ、和食もおいしいよね」 菱川はみそ汁とご飯を味わいながら嬉しそうに話している。 「そうだな、時々和食も作ろう」 遊佐が菱川の言葉に納得しながら食事を進めていると 「でも、直樹くん大変やなかった?」 普段店の方では使わない材料などもあるため悠太が心配そうに尋ねる。 「いや全然。家の方の冷蔵庫から持ってきたりしてるし、ちょうどいいんだよ」 遊佐はなんてことないように返す。 「ありがとう」 悠太は噛みしめるようにそう言った。 遊佐のそういうところが悠太の心細さを溶かしてくれた。 「そうだよね、遊佐くん一人だからさ、食材余らせてももったいないしね。悠ちゃんのおかげだよ」 なんて菱川は遊佐をからかうようにそんなことを言う。 菱川のこういうところが悠太の寂しさを紛らわせてくれた。
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