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勇者に刃物を向けるなんてなんて無謀な。何かあった時のために腰につけているフェニックスダガーを抜く。
フェニックスの力を宿したダガーは一振りしただけで一面は火の海だ。その神々しい光を発する刃を見ただけで、男は腰を抜かし倒れこんだ。
「荷物返してもらうね」
地面に転がっていた荷物を取り、女性の元へひょいっと向かう。
「どうぞ」
笑顔で荷物を差し出した。
「あ、ありがとう…ご、ございます」
女性は、恐る恐る受け取る。その表情は怯えきっている。
あの男に怯えているのではなく、間違いなくオレに怯えている…。オレ勇者なのに…。
「じゃあ」
「きゃあ」
手を振ろうと手を上げたら、女性は悲鳴を上げ、逃げるように走り去っていった…。
そ、そんなぁ。オレ勇者だよ。男から荷物を取り返したのにぃ。なんてこったい。もうこの世には勇者は必要ないみたい。
まだ1年しか経ってないのに。あんなにもてはやされたのに。
まぁ、勇者が必要なくなったってことは平和ってことか。
さぁてと、これからどうやって生きて行こうかな~。町のあちこちから笑い声が聞こえる。オレも自然と笑みがこぼれる。笑っている場合ではないのに。
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