番外編SSその1 月光花の憂愁

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いつだったか、街でコウ兄を見かけた。 たまたま仕事が非番だったので、午後から買い物がてらウィンドウショッピング。私だって女の子だ、かわいいものも好きだし洋服もほしいものがある。でもコウ兄からの援助はそういうものには絶対使わないって決めてる。 生活やどうしても必要になった時のお守り。そのおかげで母さんの入院費は捻出できた。コウ兄は「必要だったら使えよ」って言ってくれるけど、私のお給料でも買えるものしか買わないって決めてた。 あの時はたぶんコウ兄は私に気が付かなかったと思う。 モールの中にあるジュエリーショップ。いつもは覗くだけの別世界に、コウ兄がいた。 ピンク色の石のついたペンダントを見ていた。その横顔が少し切なげで決めかねていたのかもしれないけど、お店のお姉さんが笑顔で対応して、二言三言何か話したらそのペンダントを箱に入れて包んでもらっていた。あれ、絶対プレゼントだよね。
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