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浩介の場合……。
母と二人の生活は特に苦労はなかった。母は看護師だったので、夜勤や日勤(早番も含む)で時間的に余裕はなかったと思う。必死で僕を育ててくれた。
僕が幼いときに両親が離婚しているので、父の顔はあまり覚えていない。母はなぜ離婚したのか僕には言わないし、僕も聞かない。母が言いたくないことは聞いちゃいけないと、子供心に思っていた。
でも親戚はいろいろとおしゃべりで、子供の僕がいようが勝手なおしゃべりで事情はすべて理解してしまった。父は浮気をしていたらしい。父の今の奥さんが浮気相手で、母と離婚した後に後妻として家に入ったと親戚は言っていた。よくあることだというけれど、僕は母を捨てた父が好きではなかった。
近所に住んでいた、一つ年下の麻子も父親がいなかった。麻子が赤ん坊の頃に病気で亡くなったと聞いた。麻子の母親は保険の外交員で生計を立てていた、やはり普段家にいる母親ではなかった。なんとなく気になっていじめられていたのを助けたり、話相手になってやった。自分には兄弟がいなかったので妹ができたようでうれしかった。
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