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給仕をしていたゴーレムは恭しく頭を下げながら勇者の質問に答える。
「へ、へぇ~」
いつも倒していたモンスターだが、食べたことも食べようと思ったこともない。勇者一行は恐る恐る口元へと運んでみる。
モグモグ……
「う、うまい」
普通のウサギとは違って、弾力と独特のうま味が癖になる。すぐに二口、三口と口に運んでいく。
「これは?」「スライムのポタージュです」
「う、うまい……」「美味しい」「た、確かに……」
今まで経験したことのない。ねっとりとして濃厚なスライムのうま味が口一杯に広がる。
「これは?」「アンデッドフィッシュの煮付けです」「じゃ、これは?」「ドラゴンの舌シチューです」
「……どれもうまい!」「ホント、美味しい」
最初は、おっかなびっくり食べていた勇者一行だが、すぐにバクバクと食べるようになった。初めて食べる魔界の御馳走は、緊張と疲れた勇者一行の肉体にぐんぐん染み渡っていく。パーティも進み、緊張していた雰囲気もいつしか打ち解けていた。僧侶ガルフ、戦士オースティンなどは酔っ払って、悪魔将軍と肩を組んで踊りまで踊っている始末だ。
そしてパーティも進み、佳境を迎える。
「それでは、いよいよ皆さまお待ちかねの、ケーキカットをさせていただきます」
「そうそう。さっきから、これ待ってたのよ」
魔法使いのエミリィが舌なめずりをする。
六段重ねの大きなケーキは、ゾンビナイトの華麗な剣捌きで均等に切り分けられると参加者へ運ばれていく。
勿論、勇者たち一行の前にもケーキの皿が置かれる。
チョコか何かがかかった真っ黒なケーキの頂上では大ぶりなイチゴがテラテラと光を放ち、実に美味しそうだ。
「いただきま~す」「ず、ずるいぞ」「どれどれ」「俺にも食わせろ」
皿が置かれると、同時に魔法使いのエミリィがケーキへかぶりつく。それに続くように勇者たち他の面子も大口を開けてケーキにかぶりついた!
その瞬間、
「う、」「く、くるしい」
刺すような痛みが全身を走る。
「しまった。中に入っている、デーモン野苺は人間に猛毒だったですじゃ」
苦しみだした勇者たち一行を見て、悪魔将軍が思い出したように口を開く。
「このピリリとした刺激が我らには大好物なのに」
魔王グレゴールもビックリして悪魔将軍の顔を見る。
「なのにです」
悪魔将軍はうんうんと頷く。
「……なのにじゃねーよ」
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