僕と君の発熱

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何故だろう…… 僕は今、自分の部屋の真ん中で正座して悩んでいる。 目の前のシングルベッドの布団の中では君が38.7℃の熱を出して寝込んでいる。 《可笑しい……何故風邪なんて……》 僕の知る限り、君が高熱を出した事なんて1度もない。 学生の頃の君は少しの熱をおして登校してきた仲間に向かい、 『熱あるんなら、学校になんか来てんじゃねえよ!家で大人しく寝てろ!染すなよ!』 なんて口悪くても心配して帰宅を促していた。 勿論、染る事もなく、人一倍健康で、元気で風邪なんてひく事もなく、鼻水すら垂らさなかったくらいだ。 君が休んだ事なんて、無茶をして自転車で転んで足首を骨折した時だけだ。 《なんで熱なんか……》 僕は目の前でうなされている君を看ている事だけしか出来ない。 僕と違って君は社会人として働いている。 職場の誰かに染されたのだろうか? 風邪が染るくらい密着するほどの同僚って…… 君は変わらず明るく人当たりが良いから、きっと職場でも上司や先輩からも可愛がられているだろう。 笑顔で受け答えする君の隣で笑う知らない顔を思い浮かべ……イラっとした。 ……いけない、見ず知らずの男に嫉妬している場合じゃない。 君の額に乗せた冷えピタを交換するため、手を伸ばした。
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