僕と君の発熱

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僕は桜を見上げる君の横顔に魅いられていた。 生まれ育った街でなく、遠く離れた街で過ごす、近所で人気のない、桜の樹も3本ほどしかない小さな公園に君と2人でいる事が不思議だった。 君が傍にいる事が不思議で、手を伸ばして触れて確めて夢幻ではないと、君の存在を感じたくて君の頬に触れたら、君は少し驚いた目を向けてきた。 《あの時……思わず外でシタのがいけなかった……》 僕は冷えピタを手にしたまま項垂れてしまった。 《だって、可愛かったんだ!》 ぐっと冷えピタを握り締める。 まだ肌寒い、寒暖差のあるこの季節。 いくら汗をかくほど熱くなるとは言え、外で肌を曝していれば風邪をひいてしまうかもしれない。 健康だけが取り柄な君なのに…… 僕はくしゃっとなった冷えピタを両手で伸ばし、君の額に乗せた。 「ん……」 冷やりとした感触に君が反応した。 「あ、ごめん、起こした?」 「……いや」 君が虚ろな目を薄く開いて空(くう)を游がす。 「汗かいて気持ち悪くない?着替える?」 僕はそっとベッドの隣で問い掛けた。 君が頭を動かして否定して答えた。 「お前……」 そう呟いてゆらりと布団から腕を出して伸ばしてくる。 「寒い……こうしていて……く……れ」 強引に引き寄せて僕を自分の体の上に倒した。 そのまま君はまた眠る。 仕方なく僕は君から体を起こして隙間に潜り込んだ。 熱い君の体を抱き寄せて目を閉じる。 君が甘えてくるなんて…… ごめん、風邪をひかれるのも悪くない、なんて思ってしまった。 〜fin〜
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