『BACK‐END』

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 慶松が、空いたタッパーに焼き豚や、手作りメンマを入れて、送って返しているので、母も張り切ってしまうらしい。  慶松も手作りでザーサイを作り、そろそろ何か来ると対策していた。他に、冷凍にして餃子も用意している。  荷物を半分持って歩いていると、本当に重かった。これを全部持ってきたのでは、有真も疲れたであろう。 「ここが、慶松の家」  ラーメン屋松吉の裏になるのだが、庭が南側にあるので、日に当たっていて、表が店舗というのは気にならない。しかし、玄関を正面にして、左側にファミレス、右側に焼き肉屋がある。斜め後ろはビルでオフィス街、逆の後ろ斜めは駐車場、松吉の前は四車線の中央分離帯付の道路を挟みビルで、オフィス街であった。ファミレスの横に、横断歩道がある。  玄関を入って、右側、ファミレス側の部屋が俺の借りている部屋であった。二間を借りていて、板張りの洋間と、奥の和室を借りている。普段は洋間で生活しているが、時々、布団を敷いて畳で寝る。  俺は有真の荷物を、和室へ置いた。 「有真、布団を敷いて寝るようにね」  洋間十二畳、和室は六畳と押し入れ付であった。部屋は、中の襖で仕切られている。  ファミレス側の窓は開けたくないが、空気を入れ替えたいので仕方なく、和室の窓を開けた。障子戸があるので、中は見えないであろう。洋間には庭側に窓があるので、ファミレス側の窓は開けないようにしている。 「トイレは奥、二階は慶松の部屋と、同居人の岩崎の部屋がある」  俺の部屋の前が、リビングとキッチンであった。リビングは、やはり庭に面した窓は開けられるが、横の焼き肉屋側の窓は開けられない。  ファミレス側は人から見えるからで、焼き肉側は匂いが入ってくるからだ。窓が開けられない以外は、快適な家であった。  岩崎は家賃を払っていない代わりに、家事をやってくれている。風呂もトイレも、いつもピカピカで、リビングも階段も清潔であった。岩崎は、時折、溜まっている洗濯までしてくれている。  有真は、俺がここに来た原因を親から聞いていたようで、家を見て回って確認していた。俺は転勤で越してきて、すぐにここに来たわけではなく、アパートの部屋に盗聴と盗撮があり、おまけにストーカーに追われてここに来た。 「いい家です」  俺がキッチンに漬物を収めていると、後ろで有真が見ていた。 「やっぱり、野菜ばっかりですね」
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