『BACK‐END』

5/150
前へ
/150ページ
次へ
 これで、有真は結構な女好きであった。既に中学時代から、彼女の妊娠騒動などを起こしている。有真は田舎では、既に隠し子が、二桁になっていると陰口を言われている。 「彼女と結婚してください」 「それは、それだよ。護浩ちゃんは、超別格でしょう?だって、護浩ちゃんだよ」  全く意味が分からない。 「ただいま」  やっと慶松が来たので、有真を引き剥がすと椅子に座らせた。 「氷花が二人いる!」  慶松まで、同じように驚かないで欲しい。 「俺達は双子ではありません。こっちは、四歳年下、それに目の色は違う。俺は紺色でしょ、こっちは黒」  慶松が見比べていた。 「……微妙」  でもと、慶松は笑う。 「あのさ、身長が違うでしょ。有真君、百九十近いでしょ」  その違いの方が明確であった。  それにと、有真がトイレに行くと慶松が付け足した。 「有真君は未開通でしょ。氷花は、開通済み」  それは慶松だけが知っていることで、他の人が見ても分からない。 「……それは、違いが出るのか?絶対に分からないだろう」 「いいや、すぐに分かるよ。俺が来ると氷花は、身体が反応してエロい。フェロモンが出て来るみたいな感じだよ」  有真がいるところで、口説かないで欲しい。 「石田さんに、痛くない方法を聞いたよ。最初ゆっくりじっくりで、じんわりじわじわ。次にアクセルを少し踏んで、最後はターボだそうだ」  慶松は、俺が困ると分かっていて言っている。でも、本当に聞いたようで、慶松は詳しくメモを取っていた。 「車の運転の事ではないよね?アクセルってどこだよ」  そのメモを覗き込むと、唸る。慶松、字は綺麗なのに、絵が酷い。幼稚園児でも、まだまともな絵を描けそうだ。 「手の器用さと、絵のセンスは別物だな」 「よく言われるけど、俺には分かる絵だけどなあ」  人間が遮光器土偶に見える。遮光器土偶とベッドインはしたくない気もする。 「土偶……」  二千年くらい前だったら、慶松の絵も天才だったのかもしれない。  有真がトイレから帰って来たので、慌ててメモをポケットにしまった。 「氷花、遠見さんが暇なので遊びに来いと言っている」  行ってもいいが、有真の相談は何なのであろう。 「有真、相談事って他人に聞かれても大丈夫なのか?」  有真は、少し下を向いた。 「大丈夫だよ」  では、遠見の家に移動しよう。 「遠見さんの家に行くか……」
/150ページ

最初のコメントを投稿しよう!

76人が本棚に入れています
本棚に追加