『BACK‐END』

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 三人で、歩いて遠見の家に行くと、事情を聞いていない有真は、あちこち見学していた。 「遠見さんて、凄い人なのでしょ?」 「まあね」  有真は、探偵のようなものを想像しているようだ。 「遠見さん、慶松です。それと氷花兄弟を連れてきました」  部屋に入ると、遠見の妹の、伊吹 聡子(いぶき さとこ)がいなかった。聡子も結婚しているので、旦那の世話をしているのかもしれない。 「遠見さん、入ります」 「はいよ」  遠見が部屋から返事をしていた。 「遠見さん、そこにいらっしゃるのですか」  はりきって部屋に入った有真の、言葉が途切れる。慌てて俺が部屋に入ると、有真は遠見の首を持ち上げようとしていた。 「護浩ちゃん。どこに電源があるの。すごいね、瞬きしているよ」  有真が、電源を探していた。 「電気で動いていないよ」  有真は、電気関係に疎く、動物以外で動くものは皆、電気って凄いねで済ます。 「ぜんまいで動くの?」  子供のおもちゃでも、ぜんまいは珍しくなっただろう。 「ぜんまいでもないかな」  早く人間と言わないといけない。遠見が、有真を睨んでいた。 「護浩ちゃん、これ胴体があるよ」  そっと、有真が遠見を元に戻した。どうやら、やっと気付いたらしい。 「すいませんでした!生首かと思ってしまいました!」  生首だったら、電源は要らないだろう。  でも、俺も一緒に頭を下げる。 「……外見だけではなく、やることも一緒なのかな?」  俺は、電源を探していない。でも、平謝りする。 「すいませんでした」  遠見は、頭を布団に移動すると寝たふりをする。結構スネてしまったらしい。 「本当にすいませんでした」  事前に言っておけば良かった。 「でも、よく似ているよな。氷花君」  俺と有真が、同時に遠見を見た。 「二人とも氷花君だったね」  俺は、有真に遠見の能力の高さを説明する。 「遠見さんは、事故で首から下が動かなくなった。そこで、暇になった部分の脳を使ってね、あれこれ不思議な事も解決してくれる」  いや、解決はしてくれないのか。遠見は、知識の不足をフォローして、解決に導いてくれている。遠見には、人の思考が予測できるのかもしれない。  慶松が笑いながら、紅茶を淹れてきてくれた。慶松は、遠見にはストロー付でぬるいお茶を淹れていた。 「じゃ、俺の事件も聞いてください」
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