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たまに酔っ払いのおじさんが話しかけて来るのですが、2万円でライターを買ってくれと言うと笑って通り過ぎて行きました。
寒さで体の感覚が無くなりつつあった少女は、一番安そうなライターに手を伸ばすと、それに火を灯しました。
火の暖かさが、少女の顔に伝わり、暗いガード下の少女の周りは、オレンジ色に包まれました。
少女は暖かさと、灯りに魅せられて、じっと揺らぐ小さな炎を見つめていました。
「お母さん、いつ帰ってくるのかな…」
そうやって見つめているうちに、炎は小さくなっていき、シュポッっと音を立てて消えてしまいました。
まだたくさんライターはある、そう思った少女は、次々とライターを点けていきました。
オレンジ色の暖かい温もりに、少女は安心感を覚えます。
その炎に、タバコを吸ういつもの母親の姿が思い出されました。
何時間そうしていたでしょうか、ライターは1本も売れないままに、残りのライターは3つしか残ってはいませんでした。
きっと、金色のライター以外はお金にはならないだろう、そう思っていた少女は母がいつも使っていた黒く光る細長いライターに手を伸ばしました。
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