金色の星

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そんな高層ビルとは対象的に、家の周りにはいまだ何も建たないままの空き地がちらほらとありました。 バブル経済に湧いた80年代における鬼のような地上げの傷跡たちです。 もともと新宿に住んでいた人間は、今ではほとんどいなくなったと、裏のお婆さんがその空き地を見る度に、目を細めて言いましたが、少女はバブル経済で日本中が熱を持ったように浮かれ、お金を湯水のように浪費していたなどという歴史は知りもしなかったのです。 人々はタクシー代だけでも何万というお金を使い、ブランド物で身を固めて、見返りのないお金を使うことに、少しの躊躇もありませんでした。 少女の母親は、新宿に店を構える、スナックで水商売をしている女でした。少女の母も、そうやって青春時代をバブル経済とともに過ごして来ました。 父親の記憶は、もうほとんど残ってはいません。 少女の母親のスナックは、大変人気があり、いつもお客さんたちの笑う声で溢れていました。
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