金色の星

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「あの…あなた、今日ちょっと時間があるかしら?」 お婆さんの質問に、驚いて少女はまた受話器を耳に当てました。 お婆さんは、新しく出来た複合施設に買い物に行きたいのだが、行き方が分からないので連れて行ってくれないかと、少女に言ってきたのです。 少女はお金を出してくれるなら行ってもいいと答えて電話を切りました。 お婆さんは、少女に買い物に付き合ってくれたお礼だと言って、カシミアのストールをプレゼントしてくれました。 少女は、分不相応なそのストールをぎこちないお礼とともに受け取りました。 それからというもの、少女とお婆さんは時間があれば一緒にご飯に出掛け、食事を共にしました。 お婆さんは少女の素性について聞くことはなかったし、少女もまた、言うことはなかったのですが、少女はそのお婆さんがとても好きでした。 そして、とうとう少女の母親は、家を出たまま帰らなくなりました。 いつもの外泊なのだろうと思いましたが、少女の予想に反して、母親が家に帰ってくることはなかったのです。 大家から家賃を払えと言われても、電気代の請求書が届いても、少女にはどうすればいいのかよく分かりませんでした。 ただいつも言うことは、「今、母は出掛けています」の一言だけでした。
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