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少女の手元には、残り3千円しかお金がありませんでした。
宝石箱を覗いても、つい何ヶ月か前までそこにあった指輪やネックレスは一つとして残ってはいませんでした。
あるのは母親の彼氏が使っていたであろうジッポやゴミのようなライターばかりでした。
しかし、その時の少女は、そのことに対して大きな不安を抱えてはいませんでした。
「困ったことがあったら、お婆さんに言いなさい」
そう、お婆さんが言っていたのを覚えていたからです。
少女は、繋がらなくなった家の電話を一瞥すると、雪の降る新宿の街にストールを羽織り出掛けて行きました。
コンビニで月刊マンガ雑誌を買って、お釣りの小銭を握り締めて、公衆電話を探します。
しかし、ケータイが普及した今、公衆電話のある場所を探すのにも時間がかかりました。
少女が電話ボックスを見つけた時には少女の肩や頭には雪が白く積もっていました。
「もしもし、私です」
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