第十四章 月が知っている 四

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「これ、使用されていると思われる製品。高スペックを要求されるものもあるけど、 全てではない」  性能を要求されないのならば、安価を理由に切替できるのではないのか。 「……このメーカーには、かなり市場を取られたよ」 「この中で、一番の大口を取り返しに行こうか?」  柴田が、少し笑っていた。 「怖いな、氷花って。やっぱり、左遷地区にも関わらず営業一位で、 企画課に異動されたじゃじゃ馬か……」  俺は、じゃじゃ馬であったのか。それは、言われた事が無かった。 それに、営業一位というのは、偶然の産物で実力ではない。 「かなり、相手は嫌がらせしてくるけど、覚悟はいいね?」  一番の大口に食らいつくのだから、競合メーカーの嫌がらせは、 視野に入れておかなくてはならない。 俺なども、競合メーカーのパンフレットに、K商事と名前を出されはしなかったが、 その商品はクズだと書かれたくらいだ。
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