それぞれの戦場

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ドットはそれを簡単に受け止めると、力任せにバスターソードを振るう。 鎧や肉はバターでも切ったかのように簡単に裂け、余りある刀身は近くの帝国兵をも巻き込む。 何度か剣を振るっていると、ドットの周りはいつの間にか紅く染まっていた。 さすがにそれだけ暴れていると敵味方関係なくドットに注目が集まる。 味方はドットという存在に士気を上げ、相対する敵兵は震え上がる。 「落ち着け!強いといってもこいつだけだ!槍を構えろ!」 そう、上官であろう帝国兵が大声を上げると槍を持った兵士が一箇所に固まる。 槍先を集中させ、決して折れぬ覚悟を持ってドットへと殺意を向ける。 しかし肝心のドットはのん気に後ろを振り返る。 視線の先にはイセリア。 イセリアはドットの言いたいことを理解したのか、展開してる魔術とは別に詠唱を始める。 詠唱は短く、魔力をこめるとドットの傍に3m程度の石柱が地面から伸びる。 突然出現した石柱に驚く敵兵をよそに、ドットはそれを片手でつかむ。 メリメリ、と怪力でつかまれた石柱は手の形に体を凹ませる。 そこで敵も気づいたが、少し遅かった。 「プゴォ!」 ドットはそれをまたもや力任せに石柱を振り回す。 もはや槍など関係なく、吹き飛ぶ人の団子。 肉団子は破片をぶちまけながら適当な人間を巻き込みながら奥へ奥へと転がっていく。 何がおきたか理解できない敵兵と味方。 しかし、ドットにはそんな人情は通らず、棒立ちの敵兵を次々と肉塊へと変えていく。 戦場がドットとイセリアによって一方的なものに変えられていく中。 離れた場所の森では作戦通り精鋭による別働隊が動いていた。 シェーザが配属されたこの部隊は大樹の根っこや、巨大な葉に阻まれながらも確実に前進していた。 しかし敵もマヌケではなく、数人の斥候が森林を徘徊していた。 シェーザたちはどうしても障害になるようなら確実に仕留め、警戒を怠らずゆっくり進む。 木に阻まれ見えはしないが、遠くから聞こえる怒号に戦場は地獄であると知らされる。 しかし、焦ってはいけない。 それをよく理解してる別働隊の面々の動きが乱れることは無い。 そんな中、シェーザは部隊を指揮する男に話しかける。 「なぁ、いくらなんでも遅くないか?」 男はシェーザに落ち着いた声で返す。
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