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「仕方ないだろ。敵もバカじゃない、この地形を知っているし、利用する可能性があるなら斥候も出すだろう?俺たちは敵に見つかるわけにはいかないんだよ。」
その言葉を聴いたシェーザは少し考えるともう一度部隊長に聞く。
「つまり、見つからなかったらいいんだよな?」
「まぁ、結論はそういうことだ。とにかく今は静かに....。」
「じゃ、行って来る。」
「は?」
シェーザはそういうと近くの大木の幹にバスターソードを突き刺す。
小さくも大きなしなりをあげて揺れる大木。
ゆれが落ち着くとシェーザは呆然とする部隊の面々を見ながら。
「こんな森の中、上を警戒する奴なんていないだろ?いても動物かなにかだと思うだろ。それじゃ先行ってるからゆっくり来てくれよな!」
そういうなり、シェーザは大木から大木へと移っていく。
テンポよく木々を渡るシェーザを見て呆然としながらも部隊長はつぶやく。
「....じゃあお前はなんなんだ?」
______
戦場はゆっくりと進行していた。
ドットとイセリアを中心に、ゆっくりとした歩調ではあるが連合軍は確実に砦へと近づいていた。
志半ばで倒れた仲間も少なくは無いが、イセリアの魔術もあり大きな損害もなかった。
接敵し、近接戦闘によっても被害は出たが、それ以上にドットの活躍により帝国軍の方が大きな損害が出ているのは誰の目からしても明らか。
そして、戦場に変化が生じる。
「退け!一度撤退しろ!」
帝国軍から発せられる号令。
合図の狼煙と共に、まるで海の水が引くように敵兵が下がっていく。
それを見たドットはあくびをしながらイセリアに聞く。
「どうすでゅ?」
ドットの言葉にイセリアは敵の考えを読み取ろうと思考する。
遠距離攻撃を仕掛けてくるとしても、魔術を破る術をそう簡単に用意することはできないであろう。
かと言って人海戦術も先ほど見事に打ち破ったところだ。
そう簡単に別案は出ない。局地的な【戦術】ならともかく、戦場全体に及ぶような【戦略】はすぐには実行できない。
事前に準備し、あらかじめ兵たちに通達し、そして実行のタイミングを図るのが戦略である。
部隊が閃き即座に実行する戦術とは違うのだ。
イセリアは特に問題ナシと判断するとドットに指示する。
「このまま前進。何か企んでるのは間違いないから気をつけて。」
「ウイ。」
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