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ドットを先頭にゆっくり前進する連合軍。
先ほどまでの騒がしさから一気に静かになった今、連合軍の軍靴の音以外聞こえるものは無い。
いや、なかった。
はじめは違和感。次に振動。最後に経験。
その順番で何が迫りくるか理解したイセリアとドットは即座に対応に走る。
「ドット!」
「フゴ!!」
イセリアは魔術を展開しながら小さく別の魔術を展開する。
慣れた様子ではあるが、イセリアの実力を考えるとはるかに遅い。
ドットは時間稼ぎのためにひとり先行する。
「あ、おい!亜人!どこに行く!?」
それを見た兵の独りが叫ぶ。
それは頼れる仲間が突然逃げた故の言葉。
しかしドットはそんな言葉ではとまらない。
ドットは軍から離れたところまで走ると迫りくるものに集中する。
「....なんの音だ?」
足元から伝わる振動に連合軍の一部が気づく。
自分たちの進軍とはまた違うものを感じ取ったのだ。
「ドット!」
イセリアの叫びと共にドットの足元から伸びる石柱。
伸びる続ける石柱を気にしながらドットは眼前に広がる土煙をにらむ。
「....あれは!?」
馬上にいるゆえに他よりも気づいた将軍が叫ぶ。
「重装騎兵だァッ!!」
その言葉とおりに迫る重装備の悪魔。
その数およそ800
突撃陣形を敷き、ランスと呼ばれる馬の全長より長い刀身の槍を持つ、人と獣と鋼が合体した戦場の死神。
悪魔が首を切り取りにきたのを察知したのだ。
「ドット!」
イセリアの叫び。
ドットは限界無く伸びる石柱に両手を伸ばす。
伸び終わった石柱はドットの怪力によりへし折られる。
「フゴオオオオ!!」
ドットはおよそ50mほどに伸びた石柱をつかむと地面に叩き付けないようにゆっくり横におろす。
騎兵がくるまで時間がない。
ドットは渾身の力でそれを振り回す。
「プゴオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」
旋風。
何が起きたか理解できない。とはまさにその一言。
騎兵を突撃させることなく、ただ一騎も近づけず倒したその威力。
折れた石柱を見て、呆然とする両陣営。
そこに悪魔の声。
「ゴイよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ドットの咆哮。
戦場全体に響き渡るそれは、死神を追い返すには十分すぎた。
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