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虎の子の重装騎兵をいともたやすく蹴散らされたことにより帝国軍は完全に萎縮した。
先ほどと同じように再び残りの重装騎兵を含めた大規模な接近戦が発生したが、ドットの一撃は帝国兵の心を粉砕するには十分だった。
ある者は逃げ、ある者は投降し、ある者は退いていく。
これには帝国軍を指揮する将校も対処の仕様がなかった。
戦場で兵が戦いあう中、帝国軍が引きこもる要塞内では激しい討論が行われていた。
「今すぐ逃げるべきだ!ここを放棄し、国内のクーデターを処理してからまた奪還すればいい!」
「貴様はバカか!たかが敵一人の一撃で重装騎兵が500やられたなど誰が納得する!?」
「その通りだ!このまま国に帰っても我等の首が飛ぶだけだ!」
「ならせめて可能な限り兵を国に帰しましょう。誰が見ても、この要塞は時間の問題でしょう。それなら兵を帰してクーデターに当たらせるのがベストだ。」
「それよりも他所の前線で戦ってる同士にはなんと言う?防衛線を張って3日で崩されたとあらば....。」
数人の将校が集まりどうするかと議論を繰り広げる。
しかし突然始まった議論に終着点は見つからず、話はドンドン泥沼にハマっていく。
そんな議論が繰り広げられる中、ひとつの声が響く。
「急ぎ撤退する。」
沈黙を貫いていた男がつぶやくと、先ほどまでのざわめきがウソのように止まる。
現場の最高指揮官であるその男はテーブルに広がる地図を使い今後について話す。
「忘れてるだろうが、この森からおそらく少数精鋭が向かってきている。」
「しかし、斥候からの連絡はありませんが....。」
「当たり前だ。見つける前に殺されてるだろうからな。むしろ音信不通な時点で疑え。」
「で、ではすぐにでも!」
「聞け。まずは前線の連中を退かせる。要塞内に回収完了後、バリケードを構築。まずは敵の攻撃を凌ぎ、夜間に裏門から強行軍で撤退。」
「夜間に強行軍....そこまで持つでしょうか....。」
「敵の魔術は遠距離攻撃を防ぐ。要塞内から長いモノを集めろ。先端に武器を付けて長槍として運用する。城壁から門に集まる敵を攻撃、長槍が足りなければバリケードの補強と維持に兵を回せ。」
最高司令官による直接指揮。
落ち着いた指揮と現状取れる確実な戦法を示したこともあり、先ほどまで混乱していた将校たちも落ち着きを取り戻した。
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