1:必要悪

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「足斬られてないから平気だ。怪我人扱いするな幸。それよりも怪我人の手当てを。」 「だから僕は”ゆき”じゃなくて、”こう”ですって…全く。それより京子さんどうするんですかその怪我!僕一応救急箱持ってきたんですけど!」 「あぁ、ならとりあえずガーゼをくれ。止血したい。…ってか、そういえばお前ら明日講義だろ?こんな時間まで店に居やがって。怪我人の手当てはいい。サツ来る前にお前らもとんずらしとけ。あとあと面倒になる。」 こいつらは後からこの惨劇を見た連中だ。警察の事情聴取はアタシが受ける。 それに、まだ大学生だ。血を流して倒れている人が転がってるこんな風景をいつまでも見せるわけにはいかない。 「はい、ガーゼです・・・。ってそうだった!すいません京子さん!先に帰ります!…おーい桜花!!その辺にしとけ~」 「なんだぁ!?幸!折角いい所なのによぉ!」 「ゆ゛、許し゛て゛」 さっきまで狂気を演じていた男の面影はなく、ただひたすらに目の前の暴力に恐怖していた。今はもう自分が殺人鬼だったっていう実感もないのか、体の震えが見える。 そうだ。それが彼の持ち味。瀬田桜花の人を活かす暴力だ。 桜花は掴み掛った通り魔の頭を振り払うと、一目散にこちらにきた。 「大丈夫か京子?それにこの転がってんのは全員死んでるのか?」 「まだ辛うじて生きてる奴もいるよバカたれ。はぁ…はぁ…。…さっさといけ。」 「に、逃がすと思うなぁぁぁ・・・!!!うぎっ!??」 「はぁ…。こんなにやっといて、まだやり足りないとか。とんだヤリチン野郎だよ。僕こういう鬱陶しい奴嫌いなんで少し寝ててもらいます。いいですよね?京子さん。」 桜花に切りかかった通り魔は力なく倒れる。幸が咄嗟に左手に仕込んだスタンガンを当てたようだ。
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