薄赤く、空青く

4/6
前へ
/6ページ
次へ
こうして、私と彼は夫婦になった。そしてあなたが生まれたのよ。 その日は、分娩室に籠っているのがもったいないお花見日和だったわ。まあ、中に入ってしまう頃には、それどころではなかったけれど。 「お疲れ様、無事でよかった。」 この手を取ってくれた彼の手は、とてもあたたかいのに、小さく震えていた。 まさに手に汗を握って、待っていてくれたのだろう。 その様子を思うと、なんだか可笑しくって、いとおしくって…嬉しくって、鼻の奥がツンとした。 「今日は朝から、桜がやけにざわざわとしていてね。ほら、病院の近くの並木道。だから、きっと今日、生まれると思っていたんだ。」 そう言って彼は胸を張ったけれど、私の背中は丸まっていた。 「けれど、とても小さいわ。」 あなたはちょっぴり早く会いにきたから、とても心配だったの。 そしたらね、彼がこう言って笑ったの。 「でも元気だ。保育器を蹴り破ってしまうんじゃないかとはらはらしたよ。」 「ふふ、そうね。」
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加