プロローグ

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 「そういう意味でしょ」と、得意げに答えたら、意外にも、間違っていたらしんだよね。俺と同じ体型で、ずんぐりむっくりしたバアちゃんは老眼鏡の奥でちっこい目を瞬きしながら、俺を眺め出したじゃないか。その表情は、まるで珍しい動物でも観てるかのようだ。若干、傷つくよなぁ。孫をいじめて何が面白いんだよ、このバアちゃんは? だから「なんだよ、これくらい知ってるよ」と、文句を垂れたら。  固くヒモで縛ったズタ袋の口みたいにしわしわの口を開けて、「このた~けぇ!」と、叱ってきた。  で、正解は《他人に親切にするのは人の為じゃない、自分の為なんだよ》と、いう意味らしい。  「えっ! マジ?」  驚愕して、目だけはバアちゃんに似て、ちっこい目玉を大きく開けたら、バアちゃんはわざとらしく、大きく溜息をついた。  あっちもそうだろうけどさぁ、こっちもそんな時は《ああ嫌だなァ》とか《うわっ! ハズっ!》て、マイナスな気分を味わうわけよ。身内なんだから、もうちょっと優しくできないかよ。  だからさ、ちょっと拗ねて「やっぱり、この死んだジイちゃんが遺してくれたソバ屋を継ぐのは俺には役不足なんじゃないかなぁ」なんて嘆いたら、また「今なんと言いとりゃあした! こんた~わけぁああああ!」と、大目玉さ。  本当の意味は《この役目は、その人の能力にそぐわない小さなものだ。簡単すぎる》という意味らしい。  まったく嫌になっちゃうよ。
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