秘密のバスルーム

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彼女はサプライズが嫌いだ。 「何が欲しい?」 美夜(みや)は俺への誕生日プレゼントについて、直接訊いてきた。 交際期間が三年とか五年とかなら、本当に欲しい物をあげたほうが、相手が喜ぶと考えることもあるだろう。 しかし俺たちは付き合ってからまだ一年足らず。 包みを開け箱の中身を見た瞬間の、恋人の反応に、ドキドキワクワクする空気の流れの中にまだいる筈だ。何がいいかと選ぶ時間も楽しい。 女性は特に、そういうものを好むと思っていた。でも彼女は、それが好きではない。自分がするのも、されるのも。 せっかちな性格では決してないのに、今まで何かの祝い事をした時も、欲しい物を俺に訊き、彼女は自分から欲しい物をリクエストする。 合理的ではあるが、夢がない。 どちらかといえば、俺はサプライズが嫌いではないし、貰うプレゼントがその時まで分からないほうが嬉しい。 美夜も以前は、そっち側だったらしい。 いつから、どうして、今の彼女の思考が出来上がったのか、軽い気持ちで訊ねてみても、必ず口を閉ざされてしまう。 隠されていると逆に知りたくなる。だけど問い詰めて嫌われたくはない。それに実は大した問題ではないかも知れないし。 だから美夜に合わせて、初のバースデープレゼントの希望を自ら口に出した。 「それだけは無理」 思っていた通りの返事。それは俺が、 「美夜の裸を見たい」 と頼んだからだ。 物にしてくれと言われたけど、今一番の望みは、裸体になった彼女をこの目で見る事。 とっくに体の関係はあったものの、俺は一度も美夜の裸を目にしていない。 明かりを消した真っ暗な中でしかセックスをさせてくれず、唯一ゴムをつける時だけは薄明かりにする。でもその間も彼女は布団をすっぽりと頭から被って殻に閉じ籠っていた。
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