秘密のバスルーム

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二人共に二十代で、恥ずかしいにしてはあまりにもガードが固すぎる。だから彼女の嫌がる事であっても、せめて俺の誕生日くらいは望みを叶えて欲しい。変態的な行為を強要してるんじゃない。愛する人の、ありのままの姿を見たいと思うのは、ごく自然な欲求だ。 彼女の説得を試みた。手を合わせて頭を下げる男の姿とその内容には、他人からしてみれば、さぞかし滑稽だろう。『ヤラせてくれ』ではなく、既にヤッている仲なのに『裸を見せてくれ』なのだから。美夜は渋々承諾してくれた。思わず「やったぁ!」と声をあげる俺に、呆れと憂鬱が混じったような顔をした。 当日、美夜の手作りの料理と、手作りバースデーケーキを彼女の部屋で食べた。 「お誕生日おめでとう」 ロウソクを吹いて消すと、にこやかに手を叩かれた。 「ありがとう」笑顔で返す。でも俺は、この先にあるプレゼントの事で頭がいっぱいだった。 彼女が食器を洗い終えてから、二人で部屋を出た。お互い独り暮らしなのに、性行為はラブホテルですると決まっていた。そのせいで、ムラムラしたり、いい雰囲気になっても、移動時間のロスタイムにムードが台無し。でも今夜はムードはいらない。この上ない楽しみが待っている。ムラムラするのもこれからだ。 実は承諾を得たそのすぐ後に、急にハードルをあげていた。正確にいえば、プレゼントをもうひとつ、ねだった。 一度でいいから、美夜と一緒に入浴してみたかった。だから初めての披露はバスルームで、と。いきなりそんな所じゃ明るすぎて嫌、と言われて、調子に乗るなと怒られた。彼女は、ちょこっと裸を見せてからまた真っ暗にするつもりだったらしい。確かに、セックスが終わって身も心も柔らかになってからなら、抵抗は多少薄れるだろう。でも俺は最初に二つのプレゼントが欲しかった。美夜とは普通の事をしているようでいて、全く普通じゃない。そこに気付いてないフリをしていただけだ。けれど彼女に、見えない線で引かれているような寂しさを、いつも感じていた。ぽろっとこぼれた本音に、美夜は覚悟を決めた瞳で『いいよ』と答えてくれたのだ。 いつもより豪華なラブホテルの、一番値段の高い部屋に入った。もちろんその代金は男の俺が出した。先に美夜がバスルームへ消えて、呼ばれてから俺もドアを開けた。てっきり湯槽に隠れてると思っていたら、彼女は全裸で堂々と立っていた。
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