愛するということ

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 それから春人は泊まっていくよう北見に言われ、その申し出に甘んじることにした。冷蔵庫にある食材を使って二人でオムライスと味噌汁を作り、早めの夕食をとった。 「明日、アルバイトはあるのか」 「あります。十一時から」 「そうか。送っていくついでに、昼食はそこで食べよう。制服姿のおまえも見てみたいしな」 「別に、普通ですよ」  春人は小さく笑いながらオムライスを口に運ぶ。すると、「ケチャップがついている」と北見に笑われた。北見は春人の口元を指先で拭い、指についたケチャップを舐める。春人は食事を中断して北見をベッドに誘いたい気持ちに襲われたが、理性でなんとか衝動を押さえつけた。  食事の片付けを終えてテレビをつけると、見覚えのあるドラマがやっていた。例の刑事ドラマだ。これがきっかけで北見に連絡を取ろうと思ったのだと告げると、「そんな理由だったのか」と北見は呆れたように苦笑した。  その日はそれきり大人しく二人でベッドに入った。電気を消してすぐに春人は目を閉じたが、数分後、ふと思い立って声を上げた。 「北見さんはどうして僕とセックスしてくれているんですか」  隣を見ると、北見は天井を見つめたまま黙り込んでいた。その表情は、どこかぼうっとしているようにも見えた。 「どうしてだろうな」  北見が譫言のように呟く。きっとそれが本心なのだろう。曖昧な返事を、春人はどう捉えればいいのかわからなくなった。  北見は春人のほうへ顔を向け、「春人はどうして俺なんだ」と尋ねてきた。今度は春人が困惑する番だった。答えずにいると、北見は少し笑った。 「それとも、他にも男がいるのか?」 「いませんよ。北見さんだけです」  春人は即答したが、北見がどう思ったかは知れなかった。北見は何も言わず、また春人もそれきり口を開くことはなかった。
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