愛するということ

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「よく僕のアルバイト先がここだとわかりましたね」  尋ねると、智子は親指で店を指しながら言った。 「父さんの財布を見たら、このお店のレシートがたくさん入っていたから、そうじゃないかなと思って来てみたの」  普通そこまでするか、と春人は怪訝に思ったが、口には出さずにおいた。それだけ彼女が自身の父親に執着しているということなのだろう。納得はできたが、理解はできなかった。 「それで」そう言った春人の声は、自分で思っていたよりも遥かに低いものだった。「用件は何ですか」  智子は怯んだ様子もなく、むしろ楽しげに微笑んだ。春人の胸に手を当て、這うように手を滑らせる。 「私、最近誰ともしていなくて欲求不満なの。だから、私ともしてほしい。父さんがあなたにしたように」  智子はそう言ったが、春人は腑に落ちなかった。本当にそれだけのために自分に会いに来たのか、他意はないのかと疑問に思えて仕方がなかった。 「ねえ、いいでしょう」  智子が縋るような目で春人を見上げる。悩んだ挙句、春人は諦めて小さく頷いた。 「わかりました。十時に店を出るので、長野駅前で待ち合わせましょう」  待ち合わせ場所を指定し、春人は店の中に戻った。智子は店に戻ることなく、そのまま満足そうに帰っていった。
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