愛するということ

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 *****  九月に近付くにつれて北見からの連絡の頻度は落ちていき、八月二十日を最後に連絡は完全に途絶えた。忙しいと言われた以上、春人のほうから連絡をするのは気が引けた。そして、もう二度と北見に会うことはないだろうな、と春人は思った。  八月二十五日、春人は近所のコンビニで煙草を買った。北見がいつも吸っていた銘柄のものだ。家に帰ってすぐ、煙草を一本咥えて火をつける。春人はまたしてもむせた。涙の浮かんだ目を服の裾で拭う。その涙がむせたことによるものなのか、それとも北見を想ったことによるものなのかは、もはや知れなかった。
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