25人が本棚に入れています
本棚に追加
/59ページ
*****
二人の同居は十月になっても続いた。レオは生活費を入れつつ、家事のほとんどを春人の代わりにこなしていた。それは春人にとってありがたいことだった。
その日の夕食もレオが作った。春人は彼の作ったオムライスを見て感嘆の息を漏らす。それは春人が普段作るものより、また春人と北見が作ったものよりも綺麗な見た目をしていた。
「上手いな。さすがカフェで働いているだけある」
春人が褒めると、「そんなことないよ」とレオは謙遜した。
「春人だって、飲食店でアルバイトをしているんだろう?」
「僕はホールのほうが多いから」
春人が肩をすくめると、「確かにきみは接客のほうが似合いそうだ」とレオが言った。褒め言葉なのか否かわからず、春人は複雑な気持ちになった。
オムライスは味のほうも一級品だった。隠し味に何かを入れているらしい。参考のためにと何を入れたのか尋ねたが、
「教えたら『隠し』味じゃなくなるじゃないか」
そう言ってレオは笑い、答えてはくれなかった。
最初のコメントを投稿しよう!